○かつらぎ町手話言語の確立及び多様なコミュニケーション手段の促進に関する条例

令和3年3月11日

条例第3号

手話は言語である

言語は、互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造するうえで不可欠なものである。

手話は、音声言語ではなく、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。ろう者は、豊かな社会生活を営むために、手話を大切に育んできた。

しかし、これまで手話は、言語として認められず、手話を使用することができる環境も整っていなかった。そのため、ろう者は、必要な情報を得ることも十分なコミュニケーションをとることもできず、多くの不便や不安を感じながら生活をしてきた。

こうした中、障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号)や障害者基本法(昭和45年法律第84号)において、手話は言語であると位置付けられた。

多様なコミュニケーション手段の促進の必要性

障害者の権利に関する条約は、定義において、言語には、音声言語だけでなく、「手話その他の形態の非音声言語」が含まれるとしている。中途失聴者や難聴者など、手話を日常的な言語としない人にとって必要な要約筆記や、視覚障害者が必要とする点字、その他の多様なコミュニケーション手段があり、障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の選択と利用の機会が保障されることが必要である。

以上のことから、手話を言語として認識し、手話への理解の輪を広げるとともに、手話だけでなく、多様なコミュニケーション手段への理解が、より多くの人々へ広がる地域社会の実現をめざす。多様な人と人との出会いと相互理解の第一歩がコミュニケーションであることを、すべての町民が確認し合い、そのことをもって、お互いに一人ひとりの尊厳を大切にし合う共生のまちを実現する一歩とするため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、手話言語の確立及び多様なコミュニケーション手段の促進に関し、その基本理念を定め、町の責務並びに町民及び事業者の役割を明らかにし、総合的かつ計画的な施策を推進することにより、障害のある人がその障害特性に応じたコミュニケーション手段を利用しやすい環境を構築し、もって誰もが障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら、共に安心して暮らすことができる共生社会を実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者で、障害及び社会的障壁により、継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう。

(2) ろう者 手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。

(3) 社会的障壁 障害者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(4) 合理的配慮 障害者が日常生活又は社会生活において、障害のない人と同等の権利を行使するため、個々の場面において社会的障壁を除去するため必要かつ適切な現状の変更、調整等を行うことをいう。

(5) 多様なコミュニケーション手段 手話、要約筆記、点字、音声、拡大文字、触手話、指点字、ひらがな表記、サイン、写真、絵図等の視覚情報を活用したわかりやすい表現その他障害のある人が日常生活又は社会生活において使用する意思疎通の手段をいう。

(6) 事業者 事業を行う個人及び法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。)をいう。

(7) コミュニケーション支援従事者 手話通訳士(者)、要約筆記者、点訳者、音訳者(朗読者を含む。)及び盲ろう者向け通訳・介助者並びに知的障害者又は発達障害者への伝達補助等を行う支援従事者をいう。

(基本理念)

第3条 手話言語を確立するための施策は、手話が独立した言語であることを認識した上で、ろう者の権利を保障することを基本として行われなければならない。

2 多様なコミュニケーション手段を促進するための施策は、多様な障害の特性又は重複障害の困難性があることを踏まえ、誰もが障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであることを基本として行われなければならない。

(町の責務)

第4条 町は、基本理念に基づき、手話言語の確立及び多様なコミュニケーション手段の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。

(町民の役割)

第5条 町民は、基本理念に対する理解を深め、町が推進する手話言語の確立及び多様なコミュニケーション手段の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者等の役割)

第6条 事業者及び公的機関(以下「事業者等」という。)は、基本理念に対する理解を深め、町が実施する施策に協力するよう努めるものとする。

2 事業者等は、多様なコミュニケーション手段の活用により、誰もが利用しやすいサービスの提供、働きやすい環境の整備その他の合理的配慮を行うよう努めるものとする。

(施策の推進方針)

第7条 町は、第4条の規定による責務を果たすため、次に掲げる施策を障害者基本計画(障害者基本法第11条第3項に規定するものをいう。)において定め、これらを総合的かつ計画的に推進するものとする。

(1) 手話は言語であるとの認識の拡大に関する施策

(2) 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段への理解の拡大並びにこれらの普及啓発及び利用促進に関する施策

(3) 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を利用しやすい環境の整備に関する施策

(4) 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段による意思疎通の支援に関する施策

(5) 前各号に掲げるもののほか、町長が必要と認める施策

2 町は、前項各号に規定する施策を推進するにあたっては、障害者、コミュニケーション支援従事者その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第8条 町は、施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(委任)

第9条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。

この条例は、令和3年4月1日から施行する。

かつらぎ町手話言語の確立及び多様なコミュニケーション手段の促進に関する条例

令和3年3月11日 条例第3号

(令和3年4月1日施行)

体系情報
第8編 生/第1章 社会福祉/第4節 障害者福祉
沿革情報
令和3年3月11日 条例第3号